TELアイコン
MAILアイコン

株式会社GoodTheWhat

JOURNAL & NEWS

芝浦工業大学でデザインの特別授業を開催しました。

2023.01.12

芝浦工業大学にて大学院に在学中の留学生向けにオンラインで「日本企業のデザイン経営の取り組み」について、弊社榊原が特別授業1コマを担当させていただきました。

英語での長時間の講義はいつもと勝手が違い、とても緊張しましたが、、、(笑)当日は、色んな国の方が参加してくださり、グループワークを含め約2時間活気のある講座となりました。本記事では、その内容の一部をシェアします。

まずは自社の紹介から

弊社が今取り組んでいる普段のお仕事など事例を交えて説明をしました。今回、とても面白かった点は、デザイン専攻ではない外国人学生さんが対象だったので、そもそもデザインって何を指す言葉なのか?そもそもの定義の話や、それぞれの国ではどんな捉え方をされているのか?など意見交換ができた点でした。

 

普段の行為の中にもデザインが潜んでいる?〜自身の中に眠るクリエイティビティを自覚すること〜

「デザイン」や「クリエイティブ」と聞くと、ノンデザイナーにとっては、自分には関係のないものと一定の距離を感じてしまう事も少なくないと思います。しかし、私は普段のちょっとした行為の中にもデザイン的な考え方や行為が含まれていると考えています。例えば、「創意工夫」という言葉。「創意」は新しい思いつき、新しいアイディアを意味し、「工夫」は物事を実行するために、より良い方策をあれこれひねり出すことを意味します。

身近な創意工夫の例として、手帳をシールでカスタマイズして、見やすく、そして楽しくしたり、冷蔵庫の中で調味料のチューブを取り出しやすいようにフックでぶら下げたり。これらの行為は、ちょっとしたことだけれど全て工夫に富んだクリエイティブな取り組みなのではないでしょうか?まずは、自分の中にあるクリエイティビティを自覚し、自信を持つこと。全ての始まりは、自身のクリエイティブコンフィデンスを養うことが一番重要だと思っています。今回の講義に参加した学生は「自分がクリエイティブだと思うか?」という質問に対し、概ね「Yes」と答える学生が多いのも印象的でした。

デザインと経営 〜日本の中小企業の取り組み〜

デザインの定義を語る際によく議論されることとして「広義のデザイン」「狭義のデザイン」という分類があります。狭義のデザインとは、実際にモノに形を与えること、色や形を使って具現化する行為を指します。一方、広義のデザインとは一般的には意匠やモノだけではなく体験やサービス全体に目を向けて、目的を達成するための思考の枠組みやコンセプトの設計のことを指します。昨今、デザインの定義はさらに経営の領域まで範囲を広げており、2018年に経産省が出した「デザイン経営宣言」以来、デザイン経営という言葉が広まりつつあります。

<デザイン経営とは>

個々の商品の外見を優れたものにする表層的なデザインではなく、サービスの設計や商品企画の上流部分からデザイナーがプロジェクトに関わり、更には、ビジョンやコンセプトに基づくブランド構築やイノベーションの推進など経営の領域まで踏み込んで、デザインの力を活用する経営手法を意味します。デザイン経営の実践により、技術だけでは差別化が難しくなった企業の価値を向上させることができるようになると期待されています。



本授業では、日本の特に中小企業でのデザインを経営に取り入れている事例や、過去のプロジェクトの経験を交え紹介をしました。

私は、これからデザイナーは、美術的なバックグラウンドを持った人間だけでなく多様な専門性をもった、例えばITやエンジニアリングの領域の人材がますますクリエイティブの力を使って活躍をしていくと期待しています。また今後は様々な格差の解消、環境保護などの社会課題をボランティアではなく、本業のビジネスで収益を上げながら、課題解決していく事業の取り組みが必要になってきます。デザイナーのクリエイティビティが新しい価値を生み出すプロジェクトを牽引する力になると私は信じています。今回、いろんな国籍、バックグラウンドの若い世代の人たちと、今後の可能性についてディスカッションできたことは非常に有意義な体験でした。

 

WORK  〜手洗いの習慣を子どもに根付かせるアイディアを考えてみよう!〜

一通りの紹介後、実際に受講者の皆さんにもアイディアを考えるワークに挑戦してもらいました。下痢や感染症への予防施策として「子供へ手洗いを習慣化させるための良いアイディアを出す」ことをお題として設定しました。

実はこのお題設定は、過去に実際にWHOが行ったプロジェクトを元にしています。

HOPE SOAPと呼ばれるそのプロジェクトは、子どもの手洗いを習慣化させる目的で、石鹸におもちゃを入れるという仕掛けを施しました。とても単純な仕掛けですが、それは、子どもの「おもちゃが欲しい!」という気持ちを上手に手洗いへ促す行為に繋げています。デザイナーは石鹸の形状や、おもちゃを入れるという仕掛けをデザインしていますが、それ以外にも、子どもの気持ちを理解し、望ましい行動そのものをデザインしたということが一番注目すべきポイントではないでしょうか。人の行動を変容させるのは、とても難しいことです。このHOPE SOAPの場合は、子どもの気持ちをよく観察し、行動を起こすモチベーションのきっかけを石鹸に組み込んだことが成功の要因でした。小さな変更ですが、感染症による子どもの死亡率を低下させるという大きな結果に結びつきました。

 

HOPE SOAPの詳しい様子は動画でチェックしてみてください。

HOPESOAPの事例を紹介する前に、学生たちにもそれぞれのアイディアをシェアしてもらったのですが、そこで普段の生活から子供と関わることのある学生さんは、おもちゃやお菓子など「子どもにとってインセンティブのあるモノを活用する」というアイディアがすんなりと出てきており自然に「日常生活における物事の観察」ができているなーと感心しました。

最初は緊張していた様子の学生さんも試行錯誤しながらも、終始、熱心にワークに取り組んでくれました。少しでも、皆さんの将来のキャリア選択の一助になれば嬉しいなと思っています。参加してくださった皆さん、どうもありがとうございました。

GoodTheWhatでは、クリエイティブ制作やブランディングだけでなく、講座内で紹介した「デザイン経営」の支援にも力を入れています。明確な課題をお持ちの経営者の方はもちろん、なんとなく現状にモヤモヤした気持ちをお持ちの会社さまも、お気軽にご相談ください。